ソフテックでは、東京海洋大学の世界初の急速充電対応型電池推進船「らいちょう」(以下、電池船)のソフトウェアを開発協力させていただいています。
電池船開発から生まれたCAN通信モジュールSZ20(2018年に販売終了)のお話も含めて、電池船ソフト開発についてご紹介します。
CAN通信モジュールSZ20は、横河電機FA-M3ユニットでCAN通信を実現するためのモジュールで、2011年1月から2018年7月までの間、ソフテックで販売していた製品です。CANとは、Controller Area Networkの略称であり、耐ノイズ特性を意識して設計された通信規格で、主に車載機器間の通信手段として開発・発展してきました。
ソフテックがこのCAN通信モジュールを開発するに至った経緯には、電池船が関係しています。電池船ではモーターの速度を操作するためのコントロールヘッドと横河電機FA-M3ユニットで構成されるECU(電子制御ユニット)の間のデータ授受にCAN通信を使用しています。横河電機FA-M3ユニットには、直接CAN通信を受信できるモジュールが当時なかったため、間にCAN-シリアル変換器を入れて、通信を行っていました。しかし、変換器をいれることによって、コントロールヘッドを操作してから実際に加速するまでにラグが生じてしまい、操作時にストレスを感じるという問題がありました。この問題を解決するためには、FA-M3ユニットで直接CAN通信を行うためのモジュールが必須ということになり、東京海洋大学大出教授から、CAN通信モジュール開発のお話をいただきました。横河電機FA-M3にはオリジナルモジュールを開発できるI/Oオープンの仕組みがあり、それを活用することでCAN通信モジュールを開発することができました。
このモジュールを使用することで前述の操作性の問題は無事に解決することができました。電池船では今でもCAN通信モジュールが使用されており、コントロールヘッド以外にも、BMU(バッテリーマネジメントユニット)、モーターコントローラなどとECU間のCAN通信を行っています。
CAN通信モジュールは、その後、電池船以外でも汎用的に使用できるよう改良を加えた形で、SZ20として一般発売を開始し、様々な分野で多くのお客様に活用していただきました。SZ20は、受託開発を専門にしているソフテックでは数少ない自社製品であり、電池船との出会いがなければ生まれなかった製品と言えます。なお、2022年現在、SZ20は販売を終了しておりますが、後継互換品として横河電機株式会社よりF3LD21-0Nが発売されております。
電池船ソフトは、前述の通り、制御ユニットとして横河電機FA-M3コントローラを使用しています。開発環境はFA-M3用開発ツールであるWideField、開発言語はラダーになります。
電池船ソフトの特徴として、制御ユニットに接続される外部機器の多さが挙げられます。以下のような機器が接続されます。
・モーターコントローラ
・BMU
・コントロールヘッド
・急速充電器
・タッチパネル
・航海計器類(GPSなど)
・温度センサ
・電流・電圧センサ
・ロギング装置
など
これらの機器と接続するため、制御ユニットでは以下のようなモジュールを使用していいます。
・CAN通信モジュール
・アナログ入力モジュール
・Ethernet通信モジュール
・FL-net通信モジュール
・入出力(DI/DO)モジュール
・温度モニタモジュール
開発を行うための基礎知識として、CAN通信をはじめとする通信仕様を知っておく必要があります。また、外部機器側の機能や制御手順などの知識も必要になります。ソフテックでは、過去の開発実績からこれら通信、外部機器を扱うための豊富な知識、経験があります。
ソフテックでは多数の制御機器開発に取り組んだ経験からハードウェアに対する一定の知識も有しています。電池船開発においても、これらの知識が役にたっています。
電池船は、資源・エネルギー問題や環境問題に対する研究を目的としたプロジェクトであり、今後も新しい技術を取り込んだ実験が行われる予定です。これら新技術への挑戦を後押しする社風、環境が整っていることもソフテックの強みです。
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